以前イオからセライバ・フリーシステムなるモデルが出ていましたが、皆さんご存知でしょうか?
演奏中にジュルジュルと音がしたり、つば(結露水)で左手が濡れたり、タンポがベタついたり、といった演奏の妨げになるような不快なトラブルを回避するために考案されたものです。
レッスンでも人気の「僕らの音楽のテーマ」でサックスを吹いている竹上良成さんも開発に関わっています。
私の場合、特に普段から長時間吹き、なかなか調整に出す時間が取れないアルトでこのような対策を施せないか気になっておりました。タンポの劣化がもうハンパない。ハリウッドウィンズのホーンブロワー(乾燥機)を購入しようかと悩んだほどです。

イオのようにネックソケットの形状を変化させ、金属棒に水分を集中させることはなかなか難しいです。ネックソケットを加工する勇気はさすがにありませんし、パームキー(レフトサイドキー)の配列が写真のように縦一直線というのはこのモデル特有のものだからです。
水分の導線確保が最大の問題ですが、磁石の位置も一歩間違えるとオクターブ・レシーバー付近のニードルスプリングに反応して、オクターブキーが動作しなくなるといった困難も待ち受けていました。
アイデアが浮かばず、脱線。テーブルC#キー・LowE♭キー・ライトサイドTaキー・フロントFキーなどの開きを広げたり、一週間であっという間に壊れたサムフックハンガーを修復したりして、本題解決から逃避しておりました。
試行錯誤の末、金属棒のみに導線を作るのではなく、ネック内部のどの方向からの水分も受けるリング状の受け皿を用意しました。音に影響が出たり、取り外し困難にならない程度の厚さにしており、水分がダイレクトにU字管へ落ちていく ことを期待しています。

またこのリングは段差がついており(螺旋と呼ぶほどではない)、水分を金属棒へと 誘います。写真右側の水色の線は内部に構築したリングと金属棒を表しています。金属棒の先端が少し曲がっているのは水分がLowE♭キーに向かわないようにするためです。
まだ試運転中ですが、もし効果が現れれば、実質かかった費用は主に磁石代だけの2000円程度なので嬉しい限りですね。